「木綿のハンカチーフ(自分とは?)」えんちょうだより まんごの木

先日、仕事の用事が早く終わり、次の約束まで少し時間があったので、有楽町をうろうろ歩いていました。デザインの奇麗な家電や、コーヒーを淹れる道具など日本には欲しくなるものが盛りだくさんです。そんな 中、目を引いたものは、素朴でしっかりした綿素材のハンカチでした。しかもそこで買ったハンカチには名前の刺繍をしてくれるというので、早速、文字の形を選び、糸の色を決め、イニシャルにするかフルネームにするか、どの位置につけるかなど出来上がりを想像しながらワクワクして選びました。そのハンカチを受け取った時、自分だけの特別の一枚が出来た事に心から喜びを感じました。このハンカチを持つと気分が上がり、幸せな気分になれます。

大学卒業後、初めて就職をした会社を辞めた頃、自分が何をやりたいのかが分からず「神様は自分をこの世に送り出した事をお忘れではないか?」と悩んだ時期がありました。何をしても面白くなく、自分の存在意義が分からない。自分探しの旅に出る程の勇気も資金もなく、毎日を黙々と父の印刷工場の仕事をしていました。友人たちは立派に出世していくのに、自分はやる事も決まらず振り出しに戻っている。せめて自分自身のやりたい事が分かれば、と自問し続ける日々でした。結果、解った事は「自分には何も無い」という事でした。何も無い自分の中を探っても何も出てこないのは当たり前です。自分でこんな自分になりたいと未来像を描き、それに向かって一歩一歩努力していくしかないのだと気づかされました。人を羨んだり、人の真似をしたり、人と比較したりしていては、自分というオリジナリティーは創り出せないのだと思います。

今では、自分のたくさんある欠陥部分を個性だと解釈し、自分で判断した事に喜びや輝きを感じています。自分とは、このハンカチのように、一つ一つを自分で選択し決めた結果なのだと思います。地味でも自分で選んだ自分という個性を大事にし、ご縁があって私と知り合えた子どもたちが少しでも笑顔を増やす事が出来ればと思っています。

2018年9月18日
園長 峯村敏弘