言葉使い

今年87歳になる母は東京で一人暮らしをしています。母のことはいつも気にかけながら過ごしてきましたが、最近の電話でもう歩けなくなったことを告げられ、強気な母の弱気な言葉に思わず愕然としました。今回の日本出張の際、母の主治医の先生との話し合いの中で股関節の手術をすることが決まり、信頼している先生にお任せできることは本当に有難いことだと思いました。

反面、病院の中で少し気になったことがありました。それは事務職員の患者に対する言葉使いです。この総合病院は高齢の患者さんが多く、患者さんの中にはこの病院のルール通りに動けない方もいらっしゃり、現場を担当している職員のストレスは途轍もなく大きいのだと察します。しかし、受付時間より早く来た患者に対し「まだ時間じゃないんだよ」とか、診察室近くで待機していなかった患者に「何やってんの」などの吐き捨てるような言葉が否応なしにも私の耳に入ってきました。きっと耳の遠いお年寄りの患者さんにはこのような独り言は聞こえないのでしょうが、私の心はざわつき、これから母が手術をするにあたって、医療人としての資質に関し心配になりました。ですがそれ以上に、この事務職員の方々の生き方が気になってしまいました。

「神は細部に宿る」と聞いたことがあります。病院は病を治すところでありますし、直接治療をするのは医者と看護婦なのかもしれません。しかし、素晴らしい医療機関となるためには、医者、看護師を支える職員の言葉使いといった細部まで気を配る必要がある事を感じます。言葉は精神に影響します。精神は行動をコントロールします。お互いに気持ちの良い言葉を掛け合って行く事が素晴らしい仕事になり、素晴らしい生き方になるのだと思います。私が関わる教育機関では一人一人の職員が誇りと自信を持って職務を全う出来るように気を配り、どんなに慌ただしくストレスの多い状況でも、できる限り丁寧な言葉がけが出来る環境作りをしなければいけないことを再認識致しました。思いやりに満ちた心のこもった言葉遣いは、相手を心地よく幸せにするパワーの源だと思います。