久しぶりに息子がシンガポールに戻ってきました。

「親ばかちゃんりん、蕎麦屋の風鈴」と言われそうですが、息子と過ごす時間はうれしいものです。しかし、2日、3日経つとだんだんと息子の怠惰な生活が目に付いてきます。「ああ躾を失敗したか」と思っている父の心を察した様に、「久しぶりのシンガポールでのんびりしているんだよ」と、先に言われてしまいました。そうです、そうです、彼は二十歳を過ぎた立派な大人です。自分のことは自分で考えて行動しているのです。父の余計な心配はいらないのでした。

子どもの躾で大切な指針は2つだとある先生からお聞きして以来、自分もそのように実践して来ましたし、お母様方にも機会がある度毎にお伝えしてきました。それは、第一に「身体的に危険なこと」と、その次に「失礼なこと」はきちんと注意すること。それ以外は自由にさせておけばいいというものです。しかし、「それだけでいいのでしょうか?」よく尋ねられます。

「子どもが食べ物を粗末にした時は注意しなくてもいいのですか?」

「すぐに物を壊すのはほっといていいのですか?」

などの質問を受けます。

子どもの行動には原因と目的があります。先ずはそれを考えてください。お腹がすいていない時に、食事を出されても食べられないのです。原因はお腹がすいていない。目的は食べたくないことを伝えたいのでしょう。しかし、わざと食べ物を下に落としたり、ぐちゃぐちゃにしたりして遊ぶことは良くありません。これは作った人への感謝の気持ちを考えないとても失礼な行為であることを説明しなければなりません。食材を作った人、運んだ人、それをおいしく食べてもらおうと調理をした人がいることを説明しなければなりません。肉や魚が入っているときはその命についても話ができる良い機会だと思います。「身体的に危険なことと、失礼なことはきちんと注意する。それ以外は自由にさせておけばいい」この原則に立ち返って躾をしていくと、大きな学習効果もあるのです。自分で考える力や想像力、それにコミュニケーション能力も自然と身に着いてゆくと思います。