関西の大学に通っている息子が大学 4 年生になり、周りの友人たちはすでに就職活動を始めているときの話です。「やっぱり、もう少し音楽をやろうかな。アメリカに行って音楽の学校に入りたいし」などと突然言い出しました。親から見ると、どう見ても我が子に音楽の才能があるとは思えないのですが、自分の人生なのだから悔いのないように生きてほしいと思い、相談にも乗り、一応賛成しました。某有名企業の友人からも「息子の就職の相談に乗るよ」と言ってくれていた話もお断りもしました。しかし、そうは言っても心配性の父。心の中では「アメリカに行ってドラッグに巻き込まれないか」とか、「今、就職しなければ、将来良い企業には入れないじゃないか」などと息子の希望することとは反する思いでいっぱいでした。でもその思いをひたすら封印し、「親の責任は子どもを自立させる事」と腹をくくり、ここでは口出しをせず、本人の好きにさせることにしました。親が息子の人生自立を促すには、息子の人生から少し距離を置く事がなによりも大事だと思ったからです。
それから数か月後の息子からの報告では、就職が決まり勤め先は東京になるとの事。一気に拍子抜けしてしまいました。ほっとするような、がっかりするような。だったら、最初から友人の誘いにのれば良かったのにとの考えもよぎりましたがそれも我慢。親のコネを使ったり、上手いこと世渡りしても、将来幸せになるとは限りません。「自分で考えて、自分で決断し、自分で行動して、自分で責任を取る」。ここにしか幸せの道はないのです。父親の方が目の前の誘惑に惑わされそうになってしまいました。息子は世の中の厳しさを分かっていないと言ってしまえばそれまでですが、幸せは自分の手でしか掴めないのです。
今回、父として子どもの人生から距離を置き、子離れが出来たのでしょう。そしてやっと息子は親離れが出来、自立への歩みを進む事が出来たと思っております。
2017年11月
園長 峯村敏弘